OYAJI
OYA-JI、オヤ−ジ[名詞]
感情が高ぶった時に発せられるとされている言葉。主に単独で使用される。
フランスの貴族であるオー・ヤジィ・シルブプレ三世(?−1539)が妻(オフ・クロウ。?−1551)に恋をした時に「オヤージ!」と叫んだことから始まったと言われている。
自らの名を叫ぶということは、当時の貴族の流行であったために叫んだと推測できる。だが、このような場合は家名を叫ぶのが当然であり、オー・ヤジィが自らの名を叫んだことは不明である。
諸説ではオー・ヤジィの双子の弟にショルニャージ(生没年不明)という人物がおり、彼と分別をするために名を叫んだのではないかと言われている。
また、日本では江戸中期から後期に渡り「乎谷治」と言う名で絵巻にも登場する程の人気者であった。同名の歌舞伎などもあったようではあるが、現在は絵巻に姿を残すだけである。
民明書房刊「日本語解釈論−父なる我が祖国−」より
ダイヤモンド 征服できない人
などという馬鹿げた遊びは置いておくとしても、こんにちは三上です。
とても暇を持て余してしまったお陰で、某男塾を明らかに間違えた方向でパロって暇つぶしをしていました。それで楽しかったかって言われると微妙…。
なんでこの年中多忙な俺がこんなに暇になっているのかと言えば、我が息子の亮君がキレてしまったからです。
年頃だから、いつかはキレる子供とか間近で見る日が来るんだろーなあ、なんて軽く考えてたらホントに見る羽目になっちゃって………どどど、ど、どうしよう!ホント助けて!
亮がキレたのには一割位は俺の責任だと思う。
「ッ!テメェッ、いつまでもフラフラ遊びまわってんじゃねぇよ!誰のせいで俺がこんな思いしてんだと思ってんだ!」
と、帰宅早々に言われてしまったのです。
意味が分からなかったんだけどさ(今でも分かってない俺がいる)取り敢えず「誰のせい」って言うんだから、俺のせいだろう。多分。
でも、何でいきなり怒鳴られたりしなきゃいけないのか分からんのです。
確かにさ、フラフラしてるのは母さんにも良く怒られることだけどな。いい年してだらしが無い!って。
それについては俺自身も、ちょっとは思ってる。
でも女の子は大好きだし!片付けは苦手だし!亮は面倒を見なくても勝手に何でも出来る子だし!
俺が何かをしなくたって、周りが勝手にやってくれてることの方が多い。だから、それに甘えてこんな駄目な俺が出来上がった。
つってもよ「俺がこんな思い」ってナニ。どんな思いだってんだ。
親子と言っても理解の限界は当に達してて、亮のことなんて俺には何一つ分からない。
俺と違ってホントに良く出来た子で。(顔は俺も負けないぐらいどころか、それ以上男前だけどな!)
だからかなー。俺が息子を理解出来ない理由。
全く別物だから。
そんな亮は俺の前のソファに不機嫌に身を投げ出して座っている。俺は動けないで居る。
だから、暇だったっつーか…。
「………うー」
この沈黙が嫌。
亮はたまに俺に意味深な視線をぶつけてくる。何かをとっとと察しろとでも言いたげで、俺も少しは考えたけど、サッパリだったから放棄した。
俺馬鹿だから、言ってくれないと分からないよ亮。
「」
「なに?」
「俺が、これだけ腹が立ってんのに、テメェの何も理解してませんって間抜け面がすげぇムカつくんだけど」
そう言われても。
渋沢君に誘われて亮のところに行ったっていう前科(?)が無い訳でもないけど、あの後は試合に勝ってご機嫌だったじゃねーか。
俺と一緒に鍋パーティしたじゃん!
その後は俺、何もしてないんだけど。二ヶ月近く家に帰って来なかったじゃん。
だから、亮と接触はあの時以来で心当たりが無いどころか思いつきもさえしない。
「分からないもんは分かんないよ、亮」
「……………」
がつん、と俺と亮の間にあるテーブルが蹴られる。
…………えぇと、えぇと…怖い。
本気で怖い。我が息子が本当の他人に見えそうなくらいに今のは怖かった。
分からないと言った後の亮の顔は、なまじ整ってる分だけ冷たく見えて怒りに満ちていて、ただ怖かっいとしか思えない。
二十七のいい年した男が十四の子供…しかも息子に怯えてどうするんだ!
全然、親としての威厳がないぞ!俺!
こ、こういう時は、叱り付けるもんなんだっけ!?
俺自身が十四の頃は親父に良く叱られたもんだった。鉄拳やら愛の鞭やら何やで理解不能の親心(今は分からんでもない)で叱られた。
なら俺もやるべきか!テーブルを蹴ったことは叱っとかんとな!
「亮ッ、物にあたってどうするんだ!」
そうそう、こんな具合に…と言葉を続けようとしたら、ソファに身を投げ出していた亮がテーブルを更に蹴った。
な、な、ななな…!何ですかッ本当に!
十三しか離れてねーのに分かんね!分かんねーよ!
「…じゃあ、に当たれってのかよ、なあ?」
「そー…れは、嫌です…」
「それに何を親父ぶってんだよ、ウゼェんだよ」
「う、ウザい…とか言われたら幾らなんでも凹む…」
ちょっと泣きたい。
実の息子の言いたいことが分からないってことよりも、何が何だか分からない状況に追い込まれてるから。
亮のことが分からないのは、もうこの際どうでもいいってことにしても。
俺自身が亮の感情を逆撫でてんのは何となく理解したけど、理由を言ってくんねーから分かんねーんだってば。ああ、誰かを理解するって難しーことだったんですね。
俺は俯き加減に亮を見る。
息子のご機嫌を伺いつつってのが、どうも癪だけど仕方ないじゃん。
力で適わないのは分かってるし、言葉でも無理だろーと思う。俺、非力だし馬鹿だし。
「…………」
深い深い溜息を吐いて、亮は俺をじっと見てきた。
「…悪ィ」
「…え?」
「悪ィ。親父に当たってもしゃーねーことだわな。ごめん」
そう言うなり、蹴ったテーブルを元に戻して立ち上がった。
え?ええ?えええ?何、何なの?何なの?
俺を見下ろす亮の視線は、さっきとは全然違っていつもの「息子」だった。
どこか他人の男かと思わせるような怒気を含んだ視線は消えてて、いつもの亮だったんだ。
「には一生分かんねーでいいことだしな。これは、俺自身で気持ちに整理つけるから。ホント、悪かった」
亮は俺の前から去った。
その後はずっと親子の会話しかなかったけど、俺はすげーそれに違和感を覚える。
息子の異変にも気付かねーなんて親父失格だなぁ、と思いながらただ亮には当たり障りなく対応することしか出来い。
このどうしようもない状況にどうやって、ケリをつけたらいいのか分からなかった。
ちょっとばかり、山場なのか何なのかを迎えました。