おーにさんこっちら、手の鳴る方へ。
何故だか必死に彼女と鬼ごっこをしていた俺。
ハ ン テ ィ ン グ
いや、本当なんでこんなことになったんだろう。自分でも分からない。
確か…あれは凄く些細なキッカケだったと思う。
今日の晩飯を奢るか奢られるか程度のキッカケだったと思う。
なのに俺は今、必死になって彼女と鬼ごっこなんぞに夢中になっている。
彼女は楽しそうに髪の毛を揺らしながら、俺の前を走っている。掴まえることは容易い。けれど、俺はそうしない。
どうしても掴まえられないんだ。
掴まえた瞬間に、俺は獲物を狩る肉食動物になってしまいそうだから。
俺は彼女が好きだ。
無邪気で純粋で。人の気持ちを第一に考えてくれる、可愛い彼女が好きだった。
この片想いは小学四年の頃から、かれこれ5年間も思い続けてるわけだ。
根岸や三上なんかを相手取って、純情だとか初心だとかからかっているけれども、結局のところ自分が一番純情だなぁとか思ってしまう。
そんな俺の大好きな彼女は、何度も俺の知らない男から告白された。
その度に五年間も片想いをしている俺は、悉く邪魔をした。
素直に彼女が誰か他の男と付き合えるのを、見て過ごすなんてことが出来るはずが無い。
きっと、彼女が他の男のものになったのならば、俺は今までの片想いしていたノロマな感情を駆り立てて邪魔をするだろう。
今はまだ野生の中で眠る草食動物かもしれないけれど、彼女が他の男のものになってしまえば俺は相手を狩る肉食動物にだってなれる。
それ位の情熱は持ち合わせてるんだよ、この俺でも。
ただし、それがキッカケとして俺を駆り立ててくれなければ、俺はこのまま想い続けるんだろうな。
弱い弱い自分が情けない。
、好きだ。誰よりも好きなんだ。
そう言ってしまえれば、どれだけ気が軽くなるのだろう。
彼女がYESと言葉を返すなんて思ってはいない。困った笑顔でお友達で居てね、とか言われる可能性のほうが高いに決まっている。
怖くて言い出せない。
俺は、自分が情けなかった。
そう言われるのが怖くて、困った笑顔を見るのが嫌で、影でしか邪魔も出来ない想いさえも告げられない。
あぁ、中西秀二、当年とって十五歳。弱い弱い自分が情けない。
夢中になって鬼ごっこをするのは、彼女を掴まえたいからだ。
この手の中に閉じ込めて離したくないからだ。
好きです。大好きです。
俺は必死になって、彼女を追いかける。
常に鬼ごっこ状態の俺の気持ちは、いつになったら届きますか?
中西は積極的な割りに、本気の相手には今一歩って感じだと萌える。